上海の昆虫採集 夏休み昆虫研究大賞2021

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100日間(2021年3月から10月)にわたる上海での昆虫採集を通じて、今年も様々な昆虫が採れた。オオクワガタ、カブトムシ、ギンヤンマ、ナガサキアゲハ、コムラサキ、ミズカマキリ、コオイムシ、テナガオサゾウムシ、ツノトンボ、シタベニハゴロモ、シンジュサン、カメノコハムシなど100匹以上100種類超、都市化がますます進む上海のど真ん中にも、数多くの多様な昆虫が暮らしていることを再確認した。

今回は、2回目の応募となった日本昆虫協会主催の「夏休み昆虫研究大賞2021」について書き記したい。

2021年も、小学3年生(9歳)になった息子は、上海市内にある近所の公園で昆虫採集に明け暮れた。週末や夏休みには、朝・昼・晩と1日に3回も虫取りにいくため、1日あたり10km、20000歩をゆうに超え、日焼けで全身まっくろになった。息子は「どこにいけば、何の木や土があって、どんな虫がいるか、だいたいわかるで」などと言っている。

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定番のヒラタクワガタ

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テナガオサゾウムシ

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ミズカマキリやマツモムシ

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20分追い続けたギンヤンマ

それでも、昆虫採集に飽きることなく、上海でもなかなか出会えないような大きなクワガタやギンヤンマ、日本ではあまり見かけないゾウムシやミズカマキリなどを見つけると、いつもワクワクがとまらない様子で捕獲し続けた。高学年に近づくにつれて、少しずつ趣味や嗜好が変わっていくのかと思っていたが、息子のライフスタイルの中心には昆虫があり続けた。

お小遣いでは「アフリカのカミキリムシを買う」といい、お年玉では「メキシコのフンコロガシを買う」といい、サンタには「ヘラクレスオオカブトの幼虫」を願った。

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机の上は標本だらけ

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書初めも虫

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図工(版画)も虫(メキシコエボシツノゼミ)

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愛読書も虫(ブルータス)

2021年も、息子は3月~9月にかけて昆虫日記を記し続け、「夏休み昆虫研究大賞2021」に応募した。前回応募時の審査員の皆さんのフィードバックコメントがとても嬉しかったようで、今回も毎日毎日1ページあたり2~3時間くらいかけて、採集した昆虫の特徴、捕まえた場所や時間、所感などをまとめ続けた。

結果として、全国金賞と2つの審査員特別賞をいただくことができた。今年もコロナ感染予防の観点から、残念ながら表彰式は行われなかったものの、日本を代表するような昆虫王、漫画家、作家、大学教授、国立研究所の研究員さんから、とても丁寧な沢山のフィードバックコメントをいただいた。

中でも、ある審査員の方から「とても広いはんいの昆虫を楽しみにしながら、追いかけている姿が素晴らしいです。(中略)いつか研究室に遊びにおいで。未来の昆虫博士に、今の昆虫博士より。」と手書きでコメントをいただき、息子は喜びいっぱいに、何度も何度もそのメッセージを読み返していた。

事務局から息子が通う小学校にも受賞連絡をしていただき、学校便りに受賞が掲載されたり、クラスで研究内容を発表したり、大好きな昆虫を通じて、楽しい学校生活も送っている。

昆虫好きのお子さんがいらっしゃる親御さんにはぜひとも、2022年の「夏休み昆虫研究大賞」への応募をおすすめしたい。 http://nikkonkyo.org/index.html

今回、息子が昆虫研究大賞に応募した内容の「はじめに」部分を一部抜粋して紹介する。

 

はじめに

「僕は、中国の上海に住んでいる。家の近くには、「上海浦東世紀公園」というとても広い公園があって、そこには沢山の昆虫がいる。僕は、なかなか昆虫に会えない冬を乗り越えて、待ち遠しかった春から、虫とりパラダイスの夏が終わるまで、毎日その公園に行った。平日は学校に行く前の朝、休みの日なら1日中、雨の日以外は毎日通ってたくさんの昆虫に出会った。(中略)僕が虫とりをしていると、いつも中国の人たちに話しかけられる。「何をとってるの?」「なんで日本人は虫をとるの?」「その虫はなんて名前?」と、たぶんこんなことを僕に聞いているのだと思う。(中略)僕は、何で中国の人はこんなに僕に話しかけてくるのかふしぎに思った。僕の中国語の先生によると、中国には虫とりの文化がないし、学校でも理科を勉強しないから、生き物にもくわしくないそうだ。その先生も「コウモリは昆虫ですか?」と僕に聞いてきたりする。それくらい、生き物のことは知らないみたいだ。だから、中国では、僕みたいな虫取りをする子はめずらしいのだろう。

話しかけられるだけじゃなくて、僕から中国の人に話しかけることもあった。どうしても見つけたいナナフシがこの公園のどこにいるのかを聞きたかったからだ。僕は中国語を勉強して、勇気を出して、公園の警備員のお兄さんやおそうじをしているおじさんたちにきんちょうしながら話しかけてみた。おじさんたちはみんな笑顔で、一生けん命、僕が分かるように話してくれたけど、やっぱりナナフシの居場所はわからなかった。おじさんたちは、ナナフシがどこにいるのか、答えてあげられないということをすごく悔しがっているみたいだった。それでも、何かを一生けん命に話してくれた。僕は中国の人たちが、僕の話を聞いてくれて、答えてくれてうれしかった。(中略)昆虫は、僕を友だちとも、大人の人とも、外国の人とも仲良くさせてくれる。そして、昆虫は、僕に世界の知しきも、感動も勇気もくれる。僕にとって、昆虫採集は他の何よりも楽しくて、ワクワクしておもしろい。だから、僕は絶対、昆虫博士になりたい。」

 

その夢に向かって、この真冬の時期でも週末には土や枯れ木の下に潜む幼虫を掘り出しに行ったり、国立科学博物館の一流の昆虫博士によるリモート授業「かはくの昆虫博士教室」 https://helloaini.com/entry/featuring/kahaku/plan1/ を受講したり(これも昆虫好きのお子さんには、おすすめ!)、アニマルプラネットや昆虫図鑑を見ながら「今年の夏休み研究大賞は何を出そうかなぁ~」などと、昆虫が出てくる春を待ちわびている。

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かはくの昆虫博士教室リモート授業