日本の昆虫採集・夏休み昆虫研究大賞

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 125日間(2020年4月から8月)にわたる東京での昆虫採集を通じて、100匹以上の昆虫が採れた。カブトムシやノコギリクワガタ、タマムシ、ナナフシ、アオスジアゲハ、クロスジギンヤンマ、オオヒラタシデムシ、アオオサムシ、など100匹以上100種類超、東京にもまだ沢山の種類の昆虫が暮らす豊かな自然が残っていることを再確認した。

普段は上海で暮らす小学2年生の息子は、コロナウイルスの影響で一時帰国し、小学校の長期間の休校によりできた時間を使って、近所での昆虫採集とその記録に毎日毎日明け暮れた。今回はその125日間の記録である昆虫日記と、日本昆虫協会が毎年企画している「夏休み昆虫研究大賞」の受賞について書き残したい。

2020年2月から、息子と奥さんは上海を離れ、日本に一時帰国することになった。小学2年生の息子は、3月から実家近くの小学校に一時的に転入した。そのころは東京でもコロナウイルスへの感染が拡大している最中であり、中国からの転入に様々な不安があったものの、その小学校の副校長や担任の先生は本当にとても丁寧に受け入れをして下さった。

そして、休校が解除され、学校が始まってからは、息子を生き物係に任命してくれたり、その一環で息子自作の昆虫ポスターを教室に張り出してくれたり、息子が友達の中にとけこむ環境を自然につくりだしてくれた。心から感謝している。

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生き物係の昆虫ポスター

長い長い休校期間中、学校の他にも、昆虫トピックスを通じて沢山の人たちに息子は支えられた。僕が送った「昆虫好きの息子に昆虫研究の第一人者の皆さんと少しでもコミュニケーションさせてもらえないか」というブシツケなお願いメールに対して、大学、大学院研究所、科学博物館の研究員や教授の皆さんは、息子宛てに快くメッセージをくれたり、研究室に招いて下さったりした。

まさに頭が下がる思いだった。息子も、自分の好きなことの延長線上には、昆虫の研究や紹介を通じて、こんなにも素晴らしいことを考えて実践している大人が世の中にたくさんいるということを実感したようだった。

 

休校中の息子の生活サイクルはというと、学校の宿題をこなしたあと、毎日のように近くの公園や小川のそばの側道に、奥さんや祖父祖母と、ときには小学校で出来た新しい友達と連れ立って虫とりに行った。虫とりから帰ると、気づいたことやそのときの気持ちを絵日記にまとめ続けた。夏休みが終わるころには、合計125日間分で273ページにもなっていた。だいたい1日あたり300〜500文字程度だが、小学校2年生の息子にとっては、毎回1時間以上かかるし、とても根気が必要で、大好きな昆虫と出会えた驚きや気づきで溢れた毎日だったからこそ続けられたことだと思う。毎日毎日その日記をサポートした奥さんに大拍手。

ちなみにこの日記に1回だけ登場する僕(パパ)は、上海にいる虫を息子に見せようと、スマホで上海と日本をつなぐ「リモート虫取り」を敢行し、悪戦苦闘していた。日記には、息子に「早く採って!逃げちゃう!何やってるのパパ!」と怒られる様子が、父親の存在感の薄さとともに如実に描かれていた。息子よ、この上海で炎天下の中、一人のマスク姿の日本人おじさんがスマホで柳の木のウロの奥にいるクワガタを撮影する姿を想像してくれ、そんなに堂々とはやれないのだ。

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昆虫日記のもくじ

せっかくの日記なので、どこかで発表できる機会がないか探していると、日本昆虫協会の「夏休み昆虫研究大賞」の募集を見つけ、それに応募することにした。結果として銀賞と審査員特別賞をいただいた。毎年であれば授賞式が行われるようだが2020年は残念ながら授賞式は中止となり、素敵な賞状とともに審査員の皆さんからの丁寧なフィードバックが書面で届いた。小学生の300ページ近い日記を、どこまで本気で読んで審査しているか少し疑っていた自分を恥じるほど事細かなフィードバックであった。特に息子が喜んでいたのは、審査員のやくみつるさんのコメントだった。すべてのページをしっかり読み込まないと言えないことや、良かったと思う点、次につながるアドバイス、そして日記を読んで感じたこと、、、など、息子曰く「こんなにもしっかり読んでくれて本当に感動した」と何度も何度も読み返していた。

とても嬉しかったようで「つぎはどんなことを研究しようかなぁ、うーん。パパ、小型のGPS買って。虫に付けて住処を特定する研究するから。」などと言っている。うん、息子よ、上海でそれやるといろいろ危なそうだからやめよう。せっかくなので、以下に息子が書いた日記の「はじめに」を以下に記載する。昆虫好きのお子さんがいらっしゃる方には、昆虫日記や昆虫研究大賞への応募をおすすめしたい。

日本昆虫協会HP   http://nikkonkyo.org/index.html

「はじめに 僕は、中国の上海に住んでいます。でも、コロナウイルスの影響で、学校は休校になりました。そして日本に帰って、日本の学校に転校したけれど、そこも休校になりました。友だちと一緒に勉強したり、お昼ご飯を食べたりできなくなりました。長い長いお休みの間、僕は、毎日、家の近くで虫とりをしたり、標本をつくったり、昆虫の図鑑や本を読んだりしました。そして、それを毎日日記に書きました。そうして、僕の家の近くにも、クロスジギンヤンマ、ノコギリクワガタなど、色んな種類の昆虫がいることや、タマムシ、ルリタテハなど、人間には作れないような色の昆虫が沢山いることを知りました(中略)本で調べて、アシナガコガネは、飛ぶのが下手だったり、カゲロウの成虫はすぐに死んでしまったり、生き方がみんな違うのがおもしろいと思いました。昆虫は人の役に立っているということもわかりました。だから僕は、昆虫をもっと好きになって、昆虫のことをもっと知りたくなりました。僕は日記を書いて、出来るようになったことが沢山あります。はじめは、平仮名ばかりだったけれど、だんだん書ける漢字が増えていきました。文章を書くのも上手くなりました。そして、昆虫の絵も、本物みたいに上手に描けるようになりました。この日記は、毎日続けて頑張ったので、僕の宝物になりました。僕にとっては、昆虫は、友達です。そして、虫とりは他の何よりも楽しいことです。だから、将来僕は、昆虫博士になりたいです」

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コロナウイルス発生に関しての息子の主張は、「コロナは昆虫の減少によって引き起こされたのでは。どうしてかというと、自然が破壊され都市がどんどんできて、昆虫の住処が奪われることで、昆虫が減少するだけでなく、昆虫が媒介してきた受粉が行われなくなり、植物も他の動物も減っていく。結果、どんどんコロナみたいな未知のウイルスを持った動物が食べ物や住処を探して都市に出てきて人間との距離が縮まるからぁ。元はといえば人間に原因がある、やっぱり昆虫や自然は守らなきゃなぁ。」などと言っている。ちょっと難題すぎて僕は答えを持っていないが、あれだけの都市化が進んでもなお、たくさんの種類の昆虫が見つけられる日本や東京の都市の街づくりの在り方は、よいヒントになるのかもしれない。

このナショナルジオグラフィック的な問いを証明することはけっこう大変だろうけれど、世界中の学者がこぞって検証していくテーマの一つだろうから、その流れに乗って学び続けてくれることを祈るばかり。東京や上海の都市における毎日の昆虫採集がその一助になることを願って。

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